【薬剤師向け】試用期間で解雇通告…社労士が教える対処法とは?

こんにちは。
社会保険労務士の玉上信明(たまがみのぶあき)と申します。
病院や薬局にようやく採用されたのに
「働きぶりが悪い」「職場の気風に合わない」
などとして、 試用期間中に解雇を告げられたり、試用期間後の本採用を拒否されることがあります。
「試用期間」という言葉から
「会社が気に入らなければ従業員を自由に解雇できる」「解雇されたら泣き寝入り」
などと勘違いしていませんか。
この記事では、
「 試用期間中の解雇や試用期間終了後の本採用拒否は、会社が無条件にできないこと」
を法的な根拠を示してご説明します。
どのような場合なら解雇が認められるのか、認められないのか。
さらに、解雇無効を争う方法も解説します。
今回のポイントを先取り
1.試用期間といっても従業員は既に採用されており労働契約が成立しています。
試用期間中に解雇したり、試用期間終了後の本採用拒否などは、病院・薬局等が自由にできるものではありません。
2.解雇が認められるのは、能力や勤務態度等にかなり重大な問題がある場合などです。
3.解雇を告げられた場合の具体的な対応の仕方についても解説します。
試用期間の法的性質
多くの病院や薬局等では、入社後3ヶ月や6ヶ月程度の「試用期間」を置き、
実際に従業員を就労させ、人物や能力などの適性を評価し、本採用可否を決めることがよく行われます。
「試用期間」という言葉から、病院・薬局などが自由に解雇できると思い違いする人もいるようです。
しかし、裁判所の判例では、試用期間の意味を
「労働契約は既に成立しているが、会社の解約権が留保されている」としています。
解約権の行使は
「客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」
という考え方が確立しています。(三菱樹脂事件判決)。労働契約法第16条にも明記されています。
解雇が認められる場合、認められない場合
次のようなケースでは、解雇が認められています。
特に、中途採用者として即戦力と期待されたのに、期待外れだったケースなどで解雇が認められやすいです。
- 中途採用者で高評価して高給で採用したのに、仕事を積極的にしない、英語能力も不十分、上司の指示にも従わない。
- パソコン操作得意というので採用したのに、パソコン能力不十分、業務指示にも応じない。
- 管理職として採用したのに、パワハラがひどい、勤務態度も不良、能力不足などが判明。
- 新卒採用で力を入れて指導教育しているのに、単純ミスが続発、他の新卒社員より明らかに能力が劣る。
解雇が認められなかったのは、次のようなケースです。
- 会長に声を出してあいさつしなかったことが社風に合わない。
- 陰気な印象で職場に合わない。
- 勤務態度不良や能力不足の問題はあるが、指導教育で十分に改善が見込まれる。
試用期間で解雇・本採用されなかった場合の対処法
試用期間の途中で解雇されたり、試用期間終了後に本採用されなかった場合に、どうすればよいのでしょうか。
「解雇無効を争い復職を求める」あるいは
「復職はあきらめ違法な解雇であったとして未払い賃金や慰謝料等の金銭解決を求める、」
といった方法が考えられます。
病院・薬局等との厳しい交渉になります。
総合労働相談コーナーなどの公的機関や、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。
実際の手順
実務的には、次のような手順を踏みます。
(1)会社に就業規則を見せてもらって、試用期間の規定の内容を確認します。
(2)解雇理由を記載した「解雇理由証明書」の交付を会社に求めます
(会社には交付義務があります。労働基準法第22条 )。
解雇理由に納得ができなければ、病院・薬局に詳しく説明するよう求めます。
例えば「能力不足や適性を欠く」というなら、
どのような能力・適性に問題があったか具体的に説明するように求めてみましょう。
また、試用期間中の病院・薬局からの教育・指導の内容や、
職場内の上司等とのやりとりも、できる限り詳しく記録します。
解雇の有効無効の判断や金銭解決のための手がかりとなります。
あきらめずに対応することが道を開く
試用期間で解雇されても泣き寝入りはやめてください。
公的機関や専門家の力も借りて、交渉してみましょう。
また、そのような病院・薬局が本当にご自身の勤め先としてふさわしいかどうか考え直してみてください。
金銭解決を考えて、次の就職先を探すことも1つの選択肢でしょう。
(参考)
三菱樹脂事件(厚生労働省の判例解説です。ご興味あれば、ご一読ください。)