【社労士解説】薬剤師向け!残業代が支給されない時の対処法

こんにちは。
社会保険労務士の玉上信明(たまがみのぶあき)と申します。
一生懸命残業しているのに、経営者が「無断残業だ」「ダラダラ残業だ」などと残業代を払ってくれない、そんな経験はないでしょうか。どうすればよいでしょう。
この記事では、
薬局経営者の様々な残業代不払いのパターンを検討し、適切な残業代を請求するためのポイントについて、解説します。
今回のポイントを先取り
1.労働時間の原則を確認しましょう。経営者・管理者の指揮命令のもとで労働している時間が労働時間です。
2.経営者・管理者が「残業代を出さない」というときの理屈にどんな問題があるのかを解説します。
例えば、「準備や後片付けは残業時間ではない」「だらだら残業だ」「無断残業」「自発的残業」「自発的な研修の時間」「残業時間の上限を超えている」「見習い期間なら我慢しろ」などです。
労働時間は管理者の指揮命令のもとに働いている時間
労働契約(雇用契約)は、労働者(薬剤師さん)が会社(薬局)に労務を提供し対価として賃金を得る、という契約です(労働契約法第2条1項など)。
労働時間は労務を提供していた時間です。
すなわち、薬局の管理者の指揮命令のもとで労働した時間です。
労働基準法では、週40時間、1日8時間の「法定労働時間」、および週1日以上の休日付与が定められています。
法定労働時間を超えた残業や法定休日に労働をすれば、会社は割増賃金を払う義務があります(労働基準法36条)。
それでも、薬局の経営者・管理者が「残業時間ではない」「残業代を出さない」というのはどんな理屈でしょうか。
一つずつ確認しましょう。
「準備や後片付けは残業時間ではない」「だらだら残業だ」
このようなことを言う経営者・管理者は、労働時間の概念を理解していないのです。
労働時間は会社の指揮命令にもとづいて労働していた時間です。
「だらだら残業」というのは、会社が指揮命令権を適切に行使せず、薬剤師さんの提供した労働力を無駄遣いしている、とも言えます。
準備や後片付けも業務に必要な作業ならば労働時間に該当します。
最高裁判所の判例で確立している考え方です。
「無断残業だ」「自発的な残業だ」
「就業規則で残業について上司の許可が必要と定めている。無許可残業は、社員の無断残業だ」
というような場合です。
これについては、残業許可手続きが就業規則で定めるられていても
「実際には黙示の承認があった(見て見ぬふりをしていた)」
ということが多いのではないでしょうか
あるいは、時間内だけではとても片付かない業務量だったこともあるでしょう。
そのような場合は、管理者が実際には残業を認めていたと主張できるでしょう。
次のような厚生労働省の行政解釈もあります。
「黙示の指示によって行った時間外労働に対する時間外手当の支払い。
労働者が使用者の明白な超過勤務の指示により、または使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる。」
【S25.9.14基収2983号】
「時間外労働の申告上限枠を超えている」
残業時間として申告できる上限時間を定めている会社もよく見受けられます。
しかし、このような扱いは厚生労働省のガイドラインで禁止されています。
実際に労働に従事した時間により時間外労働を把握すべきものです。
「使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならない」
(「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」)
「見習い期間には残業代は出せない」「自発的研修だ」
「今は見習い期間だ。残業代を請求するのはわがままだ。」
そんなことを言う管理者もいるかもしれません。
若い薬剤師さんなら
「見習い中に残業代を請求するのは申し訳ない」
と考える人もいるようです。
大きな間違いです。
若い薬剤師さんでも、薬局としては賃金を支払い実際の業務の場で教育訓練して育てていくのです。
薬剤師さんが提供した労働力について賃金を求めるのは、労働契約上の当然の権利です。
なお「自発的研修」というのも、業務に必須の研修なら「自発的残業」というより業務そのものです。
労働時間として取り扱われます。
適正な労働時間の把握が業務の効率化につながる
この記事で述べたのは、「残業代の取りそこないをなくす」という問題にとどまりません。
適正な労働時間を把握することが、業務効率化、生産性向上、さらに若手薬剤師さんなどの効率的な育成にもつながります。
薬局経営者・管理者・同僚の皆様とも話し合って、仕事の段取り・配分などに創意工夫を凝らし、労働時間を適正に把握して生産性向上を図りましょう。
「サービス残業は仕方ない」といった発想こそが、業務効率化の妨げになるのです。
なお、薬局の中で解決できないなら、総合労働相談コーナーなどの公的機関など外部の知恵を借りましょう。
出典
厚生労働省 労働基準法の関連施行規則/関連通達 第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)
厚生労働省 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html
厚生労働省 総合労働相談コーナーのご案内
https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html





























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