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「育休後の短時間勤務は難しい」と言われた女性薬剤師へのアドバイス

「育休後の短時間勤務は難しい」と言われた女性薬剤師へのアドバイス

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こんにちは。

社会保険労務士の玉上信明(たまがみのぶあき)と申します。

 

「育児休業から復帰する際、保育園の送迎などもあり、フルタイム勤務は難しいため短時間勤務(時短勤務)を希望したところ、薬局から“うちでは時短勤務は難しい”と言われて……」というお悩みをよく伺います。

 

薬剤師という仕事は専門性が高く、勤務時間や業務体制もシフト制であるなど、柔軟な働き方が難しいと感じられるかもしれません。

 

この記事では、

「育児短時間勤務制度が難しいと言われた場合に、どう対応すべきか、どんな代替策があるのか」

について、制度の概要と実際の対応方法を含めて、わかりやすく解説します。

 

今回のポイントを先取り

1.「時短勤務ができない」と言われた場合でも、代替措置を求めることができます

2.まずは会社の制度や労使協定の内容を確認し、納得できる働き方を話し合いましょう。

 

育児短時間勤務制度とは?

法律(育児・介護休業法)では、3歳未満の子どもを育てている従業員が申し出れば、1日6時間の短時間勤務ができる制度を整備することが企業に義務づけられています。

 

この制度は、正社員だけでなく、パート、契約社員、派遣社員などの非正規の方にも適用されます(一部例外あり。たとえば1日勤務時間6時間以下の人などです。)

 

薬剤師であるあなたが、たとえパートであっても、基本的にはこの制度を使う権利があります。

 

「うちでは短時間勤務は難しい」と言われた場合は?

患者さん対応など業務が詰まっている薬局では「時短勤務は無理」と言われがちです。

しかし、制度上は「短時間勤務制度の実施が困難な業務」ならば、企業は「代替措置を」講じる義務があります。例えば以下のような措置です。

 

・フレックスタイム制の導入(勤務時間帯の柔軟化)

・始業・終業時間の繰上げ・繰下げ(8:00始業を10:00始業にずらすなど)

・事業所内保育施設やベビーシッターの手配と費用補助

・テレワーク(2025年4月以降、法律上の選択肢に追加)

 

つまり、「時短が無理」と言われたからといって、あきらめる必要はありません。

なお、「短時間勤務制度の実施が困難な業務」」かどうかは、労使協定で定める必要があります。薬局経営者が勝手に決めるものではありません。

 

本当に「短時間勤務ができない業務」なのかを確認しよう

従って、まず大切なのはあなたの業務が「短時間勤務ができない業務」として労使協定で定められているかどうかを確認することです。

 

現場の上司や人事担当者が「うちでは無理」と言っていたとしても、それが正式な労使協定によるものでなければ、間違った取り扱いなのです。

 

まずは、会社に「育児短時間勤務制度についての労使協定を見せてください」と問い合わせてみましょう。勇気がいるかもしれませんが、これはあなたの正当な権利です。

 

 

代替措置について会社と話し合おう

もしあなたの担当業務が本当に「短時間勤務が難しい業務」とされている場合には、前述した代替措置のうち、自分に合った働き方を相談しましょう。

 

「それならフレックスタイムは導入できますか?」

「出勤時間を少し遅らせてもらうことはできますか?」

「週数回だけでも早退させてもらう形は取れませんか?」

「テレワークは無理でしょうか?」

 

こうした工夫によって、家庭と仕事を両立できる環境に近づけることができます。

 

多くの企業は時短勤務制度を積極的に導入している

厚生労働省の調査によれば、育児短時間勤務制度を導入している企業は全体の約8割にも上ります。

しかも、法律で義務づけられた「3歳未満」よりも長く、たとえば「小学校卒業まで利用可能」など、より柔軟な制度を整備している企業も増えてきています。

 

薬局業界も例外ではありません。全国には、働くママ薬剤師を支える仕組みを整えている調剤薬局・ドラッグストアも数多く存在します。

 

不利益取り扱いは禁止されています

育児短時間勤務制度を利用したり、これに関して相談したことを理由に、

配置転換された、昇給・昇進から外された、嫌がらせを受けた・・

といった対応を会社が取ることは、法律で禁止されています。

 

この点でも、安心して会社に相談していただいて大丈夫です。

 

まとめ:まずは事実確認と冷静な相談から

「短時間勤務は難しい」と言われたら、まずは労使協定などの正式な定めを確認しましょう。

短時間勤務制度が適用できない業務であった場合には、フレックスタイムなどの代替措置を柔軟に話し合ってみましょう。

これはあなたの当然の権利であり、遠慮する必要はありません。

あなたが制度を知って一歩踏み出すことが、同じように悩んでいる他の職場の仲間にも良い影響を与えていくことでしょう。

 

参考資料

e-Gov法令検索 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

厚生労働省 育児・介護休業法のあらまし(令和6年1月作成)

厚生労働省 「令和4年度雇用均等基本調査」結果概要