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勤務先の薬局や病院で30分未満の残業代が切り捨てられる!どうする?

薬局や病院で30分未満の残業代が切り捨て

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こんにちは。

社会保険労務士の玉上信明(たまがみのぶあき)と申します。

 

残業代について30分単位で計算され、30分未満は切り捨てられる。

そのような扱いがされる薬局や病院があるようです。

これらは間違った取り扱いです。

 

この記事では

「なぜ間違った取り扱いなのか」

「どうすればよいのか」

について解説します。

今回のポイントを先取り

 

1. 割増賃金の対象となる残業時間は1分単位で計算します。切り捨ては許されません。

例外は1ヶ月の残業時間の集計の場合だけです。

 

2.これについては、厚生労働省のパンフレット等で明確に解説されています。

薬局経営者などと話をされるときには、これらの公的なパンフレットも示しましょう。

 

 

残業時間は1分単位で計算。切り捨ては許されない

 

例外は1ヶ月の残業時間の集計の場合だけで切り捨ては不可です。

 

原則的な取り扱い(切り捨ては不可)

毎日の時間外労働は1分単位で正確に計上するのが正しい労働時間管理です。

30分未満を切り捨てるような扱いは許されません。

 

労働時間の端数計算を、四捨五入ではなく常に切り捨てで計算することは、

切り捨てられた時間分の賃金が未払となるため認められません。(労働基準法第37条)

 

なお、例えば、タイムカードを用いて1分単位で記録しているが、毎日の集計が大変なので、「15分未満切り捨て、15分以上は30分に切り上げ」というような扱いをする事業者もいるようです。

 

これについても、厚生労働省では

「1日の労働時間の集計で切り上げは許されるが、切り捨ては許されない」

と明確に示しています。

 

(参考資料)(労働局は厚生労働省が全都道府県に設置している機関です)

大阪労働局 よくあるご質問(時間外労働・休日労働・深夜労働)Q11

東京労働局 しっかりマスター 労働基準法割増賃金編 7頁
東京労働局 従業員が働きやすい会社は伸びる!働き方のルール 労働基準法のあらまし6頁

 

 

例外は1ヶ月の残業時間の集計のときのみ

 

 ただし、1ヶ月の残業時間を集計するときだけは

「30分未満切り捨て 30分以上は1時間に切り上げ」

という便宜措置が認められています。

厚生労働省の通達でこのような端数処理の取り扱いが定められています。

 

(参考資料)

賃金計算の端数の取扱い(昭和63年3月14日 基発第150号より)

 

この通達では、様々な端数処理についても明確に定めています。

例えば、

「1時間当たりの賃金額や割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること」

は認めています。

 

逆に、この通達に反する端数処理の取り扱いは、認められないのです。

例えば次のようなことも明確に示されています。

「5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供の

なかつた限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則

に反し、違法である。」

 

 

公的な資料を明確に示そう・証拠を集めよう

 

事業主が30分未満の残業代を切り捨てているのは、

このような厚生労働省の定める取り扱いを理解していないからでしょう。

 

労働基準法では労働時間の端数処理までは明確に定めていませんが、

行政当局である厚生労働省が公的な解釈として明確にしているのです。

 

事業主が、毎日の残業時間について

「30分未満の労働時間は切り捨て」とか

「15分未満切り捨て、15分以上は30分に切り上げ」

などという扱いをしているなら、

先に示した厚生労働省労働局などの資料をはっきりと見せて交渉してみましょう。

 

多くの事業主は、知らずにやっているだけでしょうから、

公的資料を示すだけで、納得して正しい取り扱いをしてくれるでしょう。

 

 

「社労士と相談した」と言われたら…

 

事業主が「30分未満切り捨てについては社会保険労務士と相談して決めた」等というかもしれません。

 

前述の昭和63年の賃金計算端数取扱通達の以前に相談して、

そのまま踏襲しているのかもしれませんし、事業主の勘違いかもしれません。

いずれにせよ、現在では間違った取り扱いです。

通達を見せれば、一目瞭然です。

 

 

今すぐの交渉が難しい場合

 

様々な事情で

「すぐ事業主と交渉するのがためらわれる」

「折を見て話したい(例えば退職時に未払い残業代としてまとめて請求したい)」

という方もおられるでしょう。

そのような場合は、ともかく証拠を集めておいてください。

 

残業代を支払ってもらうための証拠

 

例えば次のようなものです。

 

タイムカード、雇用契約書、就業規則、給与明細、時間外労働申請書、

実際の出退勤時刻のメモ(ご自身で毎日、1分単位で正確かつ詳細に記載してください)

パソコンのログ(タイムカードの打刻時刻が事業主の指示等で不適切な場合もあるでしょう。パソコンログは実際の作業開始・終了の客観的な記録になります)

 

30分未満切り捨てについて事業主の指示文書があれば明白な証拠になりますが、

指示文書がなくても、事業主や管理者の口頭の指示を録音することも考えられます。

 

証拠の集め方についても、公的な相談先に相談しておくと良いでしょう。

働いている以上は、それに見合う賃金を受け取る権利があります。

堂々と主張しましょう。

 

そもそも、30分未満切り捨てという扱いは、

労働時間の過少計上であり、生産性向上の妨げにもなりかねません。

事業主のためにもならないのです。

 

 

【参考資料:公的な相談先など】

公的資料を示してもなお取扱いを変えないような場合は、下記の公的な機関に相談しましょう。

 

都道府県労働局・労働基準監督署及び総合労働相談コーナー

職場のトラブルの相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っている機関です。電話でも匿名でも相談に乗ってくれます。お近くの相談先について地図をクリックして探すことができます。

 

労働条件相談ほっとライン

夜間休日に電話相談に応じてくれる機関です。日中連絡しづらいならぜひ活用してください。

 

労働基準監督署

労働基準監督署は監督機関であり、多忙をきわめています。まずはじめは上記の総合労働相談コーナー等の相談専門機関に相談されることをお勧めします。