社労士が解説「入社前に聞いていたことと話が違う」というときにどうする?
こんにちは。
社会保険労務士の玉上信明(たまがみのぶあき)と申します。
薬剤師さんが就職転職するときに、「入社前に聞いていたことと話が違う」ということがあるようです。
「配属先が希望と違う」
「希望していた業務と異なる」
「就業時間、休憩時間、休日、時間外労働等が聞いていた話と異なる」
「賃金が思っていたよりも少ない」等です。
退職して別の勤務先を探そうか、等と悩む方も多いでしょう。
この記事では、
「行き違いを防ぐためにどうすればよいか」
「実際に問題が起こったときにどうすればよいか」
ということについて、解説します。
この記事のポイントを先に
ポイントを先に書いておきます。
忙しい方はこれだけ読んでおいてください。
1.事前の対策(「入社前に聞いていたことと話が違う」を防ぐ方法)
・事業主は労働者の募集・採用のさいに重要な労働条件を明示しなければなりません。
・実際に就職して、明示されていた労働条件が事実と異なる場合、労働省は即時に労働契約を解除できます。
就業のため引っ越ししていた場合等は、帰郷の旅費を事業主に払ってもらえる場合もあります。
2.事後の対応
事業主と相談をしても解決しない、相談しづらい等といった場合には、ためらわずに、公的相談機関に相談しましょう。
どこに相談をするかわからない場合は、「総合労働相談コーナー」がおすすめです。
電話でも匿名でも相談に応じてくれます。
1.事前の対策(「入社前に聞いていたことと話が違う」を防ぐ方法
法人でも個人事業主でも、人を採用するときには「労働条件通知書」という書面を交付することが義務づけられています。
おもな内容は次の通りです(モデル労働条件通知書)。
・労働契約の期間
・就業の場所(雇い入れ直後の就業場所・及び変更の範囲)
・従事すべき業務(雇い入れ直後の業務・及び変更の範囲)
・始業終業時刻 残業の有無 休憩時間 休日・休暇
・賃金の決定方法・支払い時期・支払い方法
(そのほか、退職に関する事項、退職手当の有無、賞与の有無等)
この労働条件通知書の内容をしっかり確認しましょう。
労働条件通知書で明示された条件が事実と異なっておれば、労働者は直ちに退職することもできます。
例えば、配属先や業務が通知書と異なっていた場合など、「条件が違う」としてすぐ退職することもできるのです。
就業のために住居変更していた場合なら
「労働者の退職の際に事業主は帰郷旅費を負担する」
といった定めまであります(契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合です)。
「労働条件通知書を交付しない」「帰郷旅費を負担しない」
といった事業主には30万円以下の罰金が科されます。(労働基準法第15条 第120条)
なお、事業主が労働者を募集する場合や職業紹介事業者に求人の申込みをするさいにも、
上記のような労働条件の明示が義務づけられています。
求人広告のスペースが足りない等といった場合に「詳細は面談時にお伝えします」ということは許されますが、
この場合も、次の対応が義務づけられています。
・原則として面接などで求職者と最初に接触するまでに、全ての労働条件を明示する
・面接等の過程で当初明示した労働条件が変更となる場合は、変更内容を明示する
求職時には、事業主がこの対応をちゃんとしているか、しっかり確認してください。
そのうえで採用時には「労働条件通知書」をしっかり読み込み、疑問があればすぐに確認してください。
なお、労働条件通知書のほかに「雇用契約書(労働契約書)」を取り交わすことも多いでしょう。
あるいは「労働条件通知書兼雇用契約書」という書式になっているかもしれません。
これらの内容確認も労働条件通知書と同様に慎重に行ってください。
2.事後の対応について
労働条件通知書と実際の就業の条件が違っていた場合、
事業主に説明を求めて対応してもらうべきですが、働く立場として事業主との交渉は難しいかもしれません。
そんなときはためらわずに、公的な相談機関に相談しましょう。例えば次のような機関です。
職場のトラブルの相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っている機関です。
各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内など379か所に設置されています。
電話でも匿名でも相談に乗ってくれます。年間120万件以上の相談を受けています。まさによろず相談所です。
相談のほか、事業主に対する「助言・指導」や「あっせん」もしてくれます。
労働基準法違反等の問題の場合は労働基準監督署に取り次いでくれます。
ご希望があれば、裁判所、地方公共団体(都道府県労働委員会など)、
法テラスなどの他の紛争解決機関の情報も提供してくれます。
労働基準監督署は、会社が労働法令等に違反しないように監督指導する機関です。
労働者からの申告も受け付けています。
とはいえ、労働者のためのよろず相談窓口ではありませんし、
事業者と労働者の間に入って仲を取り持ってくれるわけでもありません。
いきなり労基署に相談に行くよりは、まず総合労働相談コーナーに相談される方がよいと思います。
総合労働相談コーナーや労働基準監督署などが閉庁している平日夜間、土日・祝日に電話で相談できます。
平日に電話しづらいと言ったときにおすすめです。
ただし、事業主に対する指導などは行ってくれません。
あくまで相談の窓口です。
電話0120-811-610
開設時間:月から金17~22時 土日祝日9~21時
【参考資料】
1.事前の対策(「入社前に聞いていたことと話が違う」を防ぐ方法
①採用されるとき
モデル労働条件通知書(再掲:書面交付が原則ですが、ファクスや電子メール等での交付も認められます。ただし、出力して書面化にできる場合に限ります(労働基準法施行規則第5条)
②求職のとき
求職者の皆さま 企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!
求人企業の皆さま 募集時などに明示すべき労働条件が追加されます!
職業紹介事業者の皆さま 求職者への労働条件明示のルールなどが変わります!
2.事後の対応
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