人が足りなくて有給が取れない!薬剤師が休みを取る為の法律と実務

こんにちは。
社会保険労務士の玉上信明(たまがみのぶあき)と申します。
この記事では有給休暇が取りづらい、という薬剤師さんのお悩みを解決するポイントを解説します。
「求人票では年間休日が多いと書いてあったのに、いざ入社したら人が足りなくて有給休暇が取れない……」
そんな悩みを抱えている薬剤師や薬学部学生の方は少なくありません。
特に少人数で回している調剤薬局やクリニックモールなどでは、
「自分が休んだら他の人に迷惑がかかる」
「休み希望を出しにくい」
というプレッシャーを感じがちです。
しかし、有給休暇は法律で認められた労働者の正当な権利です。
今回は、法律上の原則をおさえた上で、現場の仲間と摩擦を起こさずにスマートに休みを取得し、さらに職場の生産性を上げるための「実践的な工夫」を解説します。
今回のポイントを先取り
有給休暇を取るのは労働者の権利です。
経営者が妨げることはできません。
実際の現場で有給休暇が取りづらいのは、例えば業務の属人化、周りへの気兼ねといった問題があると思われます。
これを解決する現場の知恵として3つ考えてみましょう。
①「チームで計画を立てる」年間&月間スケジュール
② 「業務の共有・マニュアル化」
③ 日頃からの感謝と「報・連絡・相談」
休みをお互いにしっかりとることが、生産性の向上にもつながります。
知っておきたい原則:「有休は労働者の権利、理由は不要」
まず大前提として、有給休暇について法律が定めている基本ルールをしっかり確認しておきましょう。
・理由を告げる必要はない
有給休暇を取得する際、会社側から理由を聞かれたとしても、法的にそれを答える義務はありません
・「私用のため」で十分
「旅行に行く」「なんとなく休みたい」といった理由であっても、会社が時季変更権(業務の正常な運営を妨げる場合に行使される例外的な権利)を発動しない限り、会社は拒否できません。
(注)使用者による時季変更権(労働基準法39条5項但書)は単に「業務多忙だから」ということで行使できるのではありません。「事業の正常な運営を妨げる場合」に限定されています。
・年5日の取得は「会社の義務」
2019年から、年10日以上の有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、会社は「年5日確実に取得させなければならない」というルールが義務化されました(使用者による年休付与義務:労働基準法39条7項本文)。
もし守られなければ、会社側に罰則が科されます。「そもそも休ませない」という選択肢は法律上あり得ないのです。
なぜ「取れない」と感じるのか?現場のジレンマ
法律上の権利があるにもかかわらず、なぜ現場では「取れない」という事態が起きるのでしょうか。その大きな原因は「業務の属人化」にある場合が多いと思われます。
- 「この処方箋の監査や疑義照会は、あの人しかできない」
- 「在庫管理や発注業務がその人にしか分からない」
こうした状態のまま誰かが休むと、残されたスタッフに過度な負担がかかります。
その結果、「申し訳なくて休めない」という心理的負担が生まれ、現場の人間関係に摩擦が起きてしまうのです。
摩擦を起こさず、スマートに休むための「3つの知恵」
では、周囲と良好な関係を保ちながら、計画的に休みを取得するにはどうすればよいのでしょうか。現場ですぐに使える具体的な工夫を見ていきましょう。
① 「チームで計画を立てる」年間&月間スケジュール
有給休暇は、直前に突然申請するのではなく、あらかじめ「チームで共有するカレンダー」に組み込んでおくのが鉄則です。
四半期や半期のはじめに、スタッフ同士で
「この時期に連休を取ってリフレッシュしよう」
「この月は誰かが休む代わりに、お互いサポートし合おう」
と可視化しておけば、管理薬剤師も人員配置を計画しやすくなります。
② 「業務の共有・マニュアル化」で穴埋めできる仕組みを作る
「自分がいないと回らない」を解消することが、実は一番の防衛策です。
発注のルールや特殊な調剤の手順、かかりつけ患者様の引き継ぎ事項などをノートやデータに残し、誰でも代行できるようにしておきましょう。
お互いに「カバーし合える環境」を作ることは、急な体調不良や冠婚葬祭の際にも自分を助けてくれます。
③ 日頃からの感謝と「報・連絡・相談」
休みを取る前後は、周囲への配慮を言葉と態度で示すことが大切です。
「この日はお休みをいただきありがとうございます。引き継ぎは〇〇にまとめておきました」
と一言添えるだけで、職場の印象は大きく変わります。
権利の主張だけでなく、チームへの配慮を忘れない姿勢が信頼を生みます。
休みを取ることが「生産性向上」につながる
「しっかり休むこと」は、決してサボりやわがままではありません。
適度な休息を取ることは、調剤ミスやダブルチェックの漏れといった重大なヒューマンエラーを防ぐために不可欠です。
また、業務の属人化を防ぐプロセス(マニュアル化や情報共有)は、結果的に薬局全体の業務効率化や、生産性の向上に直結します。
つまり、「休みやすい職場環境づくり」は、患者様への安全な医療提供と、薬局の経営安定の双方にプラスになるのです。
まとめ:権利を守り、働きやすい環境を自分で創ろう
有給休暇の取得は、法律で守られたあなたの権利です。
「人が足りないから無理」と諦めるのではなく、チームでの計画や業務の共有を通じて、お互いに支え合える環境を創っていくことが大切です。
求職活動や転職の際も、
「現場でどのように有給が消化されているか」
「スタッフ同士のカバー体制がどうなっているか」
を面接で質問してみることで、その職場の本当のチームワークが見えてきます。
正しい知識とちょっとした工夫を武器に、心も身体も健康に働き続けられるキャリアを築いていきましょう。





































